それをお金で買いますか-市場主義の限界

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こんにちは、読書の夏ですね。あっ、違いました?今日の記事はブックレビューのような記事です。以前マイケル・サンデルさんの「これからの「正義」の話をしよう」という本を読みました。その本がとても面白かったので、今度は彼の書いた「それをお金で買いますか――市場主義の限界」という本を読んでみることにしました。

結論から言うと、とても面白かったです。彼の書く書籍はとても深く、速読はできないのですが、読む価値は高いと思います。

この世は市場システムで動いています。アメリカや日本はもちろん、近年では社会主義共産国家であった中国でも市場システムの導入が進んでいます。このように世界のほとんどの国家が運用しているシステム「市場システム」は適切なものなのでしょうか。

アダム・スミスは市場システムについて次のように述べています

各個人が自己の利益を追求すれば、社会全体の利益となる望ましい状況が「見えざる神の手」によって達成される。

現代はこの理論に基づき、市場システムを正当化してきました。そして、実際に市場システムが経済を豊かにし、先に市場システムを導入していた欧米諸国、日本などは経済大国となりました。後発の中国、ブラジルなどは現在「経済的に発展途上国」と呼ばれています。

これらのことから、我々は市場システムは完全であり、それに勝るシステムはないと信じてきました。

しかし、この本ではそれに疑問を投げかけます。我々は確かに豊かになりました。しかし、アメリカ型経済システムは社会の格差を拡大させ、お金至上主義をはびこらせ、正義を追い出し、社会を不安定にしてきたのも事実です。

思い出してみてください。以前、日本は「一億総中流」とも言われたように、格差の少ない社会でした。しかし、小泉政権によるアメリカ型経済システム「市場至極主義」によって、大きな政府から小さな政府へ改革を進めてきました。その結果、日本は豊かになったのでしょうか?格差がより広がっただけではないでしょうか?

この本にはアメリカのケースが書かれていました。アメリカは日本よりもひどいようです。一部のリベラリストたちはすべてのものに市場主義を導入することを唱えているようです。生命保険、コンサートのチケット、医療を受ける権利、野球観戦での特別席、死、能力、すべてのものがお金で取引できるようになっています。

その結果、アメリカ人は豊かになったのでしょうか?確かにGDPをみれば世界で郡を抜いています。しかし、国民は豊かなのでしょうか?一部の大金持ちに金が行っているだけなのではないでしょうか。

この本は問いかけます。市場システムは本当に利益分配に適したシステムなのでしょうか?

これに対して、よく唱えられるのが、「市場システムが不完全なのは『完全なる自由の下』で取引をしていないからだ」。確かにその通りです。売買春、臓器の売買、これらは、貧乏でお金がないがために、売らざるを得ないという状況もあります。しかし、「完全なる自由の下」で取引を行えば、市場システムは完璧なのでしょうか?

あまり本の内容を詳しく書いても良くないので、ここらへんで止めておきますが、一つだけ紹介したい内容があるので、紹介させてください。

インセンティブという言葉があります。これは誰かに、何かをやってもらいたいとき、もしくは、モチベーションを高めたいとき、お金を払うことで、やってもらう、やる気を高めてもらうというものです。この「インセンティブ」という言葉、最近ではよく使われるようになってきたのですが、以前はそれ程ではなかったようです。お金が登場し、市場システムうが登場しても、当初はあまり使われることがありませんでした。しかし、今に近づくにつれ、使われる頻度が高まってきたのです。

これはつまり、我々人間がより、お金に動かされやすくなっていることを表しているのだと思います。

人類は「お金」という便利な道具を発明しました。当初は物品のやり取りだけに使われていたのですが、次第に権利、安全、愛、など多くのものを購入できるようにしてきました。その結果、とても便利になりました。これによって「お金は力を持つようになりました」

人類は、お金に力を与えました。当初は人間がお金をコントロールしていました。しかし、お金は力を持ちすぎました。今、人間はお金をコントロールできているのでしょうか?お金に動かされてはいないでしょうか?マクロの視点から世界を眺めてみましょう。経済危機で各国は悲鳴をあげています。どの国も最優先事項は「経済政策」です。国家はお金のために動いているのではないでしょうか?

ミクロの視点から見てみましょう。あなたは、失業していますか?確かに経済不況のため、以前より失業率が高いのは確かです。でも、仕事を選ばなければ仕事はあります。給料が低くてもよければ、仕事は手に入ります。高い給料をもらわないと生きていけないのでしょうか?生きていくとはどういうことでしょうか?

消費をすることが生きていくことなのでしょうか。人間らしく生きるとはどういうことなのでしょうか。あなたはお金のために仕事をしていますか?それとも仕事をしているから、お金をもらっていますか?

ミクロの視点からも、我々はお金のために行動している人が多いように思えます。

個人、国家、そして世界がなぜかわからないけれど、お金のために行動している。これは正しいのでしょうか。人間はお金をコントロールしなければいけません。人間がお金にコントロールされてはいけないのです。

それをお金で買いますか (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

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