貿易取引の中で、最も誤解されやすい取引条件(インコタームズ)はEx-Works(工場引き渡し)です。別記事でも紹介しましたが、非常にややこしく、輸出者と輸入者、また間に入る物流業者とで認識が異なる場合がありますので、初めてEx-Works条件で取引を行う場合は、見積もりも含め丁寧な確認が必要となります。
さて、今回の記事で紹介するのは、Ex-Worksで取引をした場合、書類上の輸出者や通関手続きにかかわる手配について説明していきます。
前回の記事については下記を参照ください。
-
誤解が多い取引条件Ex-works(工場引き渡し条件)とは?
貿易業界で働いていると、取引条件(インコタームズ)は避けては通れない問題です。取引条件については、国際商業会議所が策定しており、数年に一度内容が更新されています。現在はIncoterms 2010が最 ...
続きを見る
EXW輸出者は誰?
結論から言うと、Ex-worksで取引を行う場合、書類上の輸出者や通関手配まで含め、すべて輸入者が責任をもって行うのが定義上の原則です。ただし、実際には商取引上の慣習や商品に関する知識不足などから、通関に関しては輸出者が行う場合がほとんどです。
それでは、厳密な定義上の輸出者や、慣例上の動きなどについて詳しく見ていきましょう。
Ex-Worksとは、
EXWは、インコタームズ2010の規則の一つで、売主が、売主の施設又はその他の指定場所(工場、製造所、倉庫など)で物品を飼い主の処分にゆだねたときに引き渡し義務を果たすことを意味します。
日本貿易振興機構(ジェトロ)より引用
とあり、輸出者の負担が最も少なく、国内の工場(もしくは指定場所)で輸入者(代理人)へ引き渡した時点で、すべての責任が完了します。
したがって輸出通関の手続きは買主の義務です。
定義上、書類上の輸出者
Ex-worksにおいて、定義を厳密に当てはめる場合、輸出入に関する書類上の輸出者は、販売者ではなく、輸入者になります。
つまり、輸出にかかわるインボイス・パッキングリスト、通関委任状、輸出に必要な商品情報や追加書類、船荷証券(B/L)上の輸出者も含め、すべて輸入者=輸出者として手配するのが正式な流れとなります。
あれっ?何かおかしくないですか?
ちょっと待ってください。インボイス・パッキングリストは通関に必要な書類ではありますが、商品価格や個数、商品詳細などは輸入者が知りうるのでしょうか?
Ex-worksで取引を行うということは、商品を引き渡した時点ですべての責任が輸入者へ移転しますので、それ以降にかかわる作業はすべて輸入者の責任というのが定義上の考えです。
しかし、実際に商品を輸入代理者(フォワーダーなど)に引き渡しを行うのは、輸出者ですし、商品の内容、価格などを知っているのは輸出者ですよね。また、通関に際し、追加で必要になる情報や書類などが発生することもあります。
慣例上、書類上の輸出者
そのため、取引では通関に関する補助としての位置づけで、輸出者が「輸入者の指定した通関業者」と密に連携をとって通関を行うことになります。スムーズな取引を行うため、書類上(インボイス・パッキングリスト、通関委任状、船荷証券)の輸出者はEx-Worksであっても売主が輸出者となって進める場合が多いですし、そのほうがスムーズに進みます。
まとめ
Ex-worksは売主にとっては一番負担の少ない取引条件です。しかし、反対に輸入者は非常に負担が多くなるのが事実です。定義上は売主は、輸入代理人に商品を引き渡した時点で全責任がなくなりますが、商売はお客様あってのものです。ですので、売主としてEx-worksで取引をする場合は、通関などに関し可能な限り輸入者へ協力するようにするとよいでしょう。
また、逆に輸入者としてEx-worksで取引を行う場合、売主へ通関などで協力してもらえるよう事前に相談しておくとトラブルが少なくて済むでしょう。