世界最大のコンテナ船会社、A.P. Moller - Maerskはデジタル仲介スタートアップ、Loadsmartへ約2000万ドルの投資をすると発表しました。Loadsmartは物流において、トラック手配の仲介をデジタル化することを手掛けている会社で、マースクラインは同社へ出資することで、コンテナ輸送を円滑化を図るとのことです。
マースクラインの自動化への投資
世界最大のコンテナ船会社、A.P. Moller - Maerskは陸上輸送を中心にするデジタル仲介ベンチャー、Loadsmartへ2160万ドル、日本円で約25億円を投資すると発表しました。これにより海運と陸運の複合輸送において、さらなる自動化・デジタル化を図るものと思われます。
デジタル仲介
Loadsmartは2014年に設立された会社で、単に物流のプロフェッショナルとしてだけではなく、迅速なトラック手配、そして追跡を手掛け、さらにテクノロジーを使った円滑化を図ることを目的としています。
特に国際物流における、保税倉庫からの引き取り、倉庫への搬入、待機時間などトラック輸送では人手不足とともに大きな課題となっています。それらの課題とITの力を使って解決しようとしているのがLoadsmartなのです。
LoadsmartはMaersklineとの提携とともに、アメリカ最大の港湾管理会社Ports Americaへ出資しているOaktree Capital Managementとも提携を行ったと発表しています。これにより、コンテナ会社、港湾、トラック輸送においてIT化が進むことが期待されます。
今回、マースクラインが新たに出資することで、トラック輸送(コンテナ輸送含む)のさらなる円滑化が期待されます。Loadsmartの手掛けるデジタル仲介を経ることで期待されるメリットは中間コストの削減と、待機時間の短縮、そして自動化です。
中間コスト削減と待機時間の短縮
Loadsmartの手掛けるデジタル仲介を使うことで中間コストの削減が期待されます。物流業界では通常トラック会社は複数使う場合が多く、メインとサブで使い分けるケースが見られます。しかし、近年の人手不足によりメインとサブだけでは手配が難しくなり、新たにトラック会社を開発するケースも見られます。
通常期であれば、特に問題なく手配ができますが、繁忙期になると早め、早めでトラックが抑えられてしまうため、輸送手配をするためにはいくつものトラック会社へあたり、配送可能かを確かめる必要が出てきます。スムーズにいけば時間はかかりませんが、トラックを見つけられない場合、かなりの時間をとられてしまうのです。
しかし、デジタル仲介を利用することで、空いているトラックを瞬時に把握し、倉庫の待機時間などもすいている時間に手配することで中間コストの削減と、待機時間の短縮を実現することができるのです。
日系企業もマースクラインへ倣え!
マースクラインの営業スタイルは日本では敬遠されがちですが、物流業界で最もIT化が進んでいるのはマースクラインです。日本では少子高齢化と物流業界の労働環境から、人手不足が深刻です。しかし、給料を上げ、人材を確保しても、それはあくまでも人海戦術にすぎません。
さらなる効率化を図るためには、IT化が避けては通れないのです。関東、特に東京では年末にかけトラック不足やドレージ不足、そして港での待機時間が深刻になりますが、これもIT技術を駆使すればずいぶんと緩和できるのではないでしょうか。
日本でも、銀行や保険会社などは積極的にAIの導入が進んでいますが、物流業界こそAIの導入やIT化を進めるべきではないのでしょうか。このままIT化に後れを取っていると、いずれはマースクライン、ダムコ連合を筆頭とする欧米系の企業に牛耳られてしまうのではないでしょうか。
従来のITは応用が利かないのが難点でしたが、近年の目覚ましい発展により、AI技術である程度の応用であれば対応できるようになりました。まだまだ人間の能力には及びませんが、人手不足が深刻になる中、日系企業も倉庫・トラック・ドレージ・港湾などIT化を進めるべきではないでしょうか。
まとめ
マースクラインは海運業界では非常に大きな力を持っています。IT化も最も進んでおり、進み過ぎているがゆえに2017年にはサイバー攻撃で物流がストップしてしまいました。しかし、その後の復旧と、セキュリティの強化により、より強固なIT基盤が出来上がったのです。IT技術をあまりにも利用しすぎるあまり、営業スタイルとしては人間性が軽視されてしまうケースも見られますが、それでも数字は確実に上げています。
どんなに営業が頑張っても、どんなに良い関係を築いても、最終的にはコスト判断になりがちな物流業界で、IT化により高度なまでに合理化されたマースクラインは非常に大きな脅威です。顧客との関係は人間らしさがあってこそ、築けるものですが、そのバックアップのためにもIT化は必要なプロセスです。
欧米やシンガポールにくらべ、IT化の遅れている日本ですが、ただでさえ人件費の高い日本です。IT化を進め物流コストを削減しなければ、世界に取り残されてしまうでしょう。